世界で民主主義が少数派になり、ルールを変えられる危機

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『櫻井よしこ×先﨑彰容 民主主義か専制主義か 中国の台頭と世界秩序』

先﨑彰容(日本大学危機管理学部教授):「自由と民主主義」を、ただ言ってるだけでは通用しない時代に入っているにも関わらず、日本人は往々にして、国内においてはとりわけそうなんだけれども、それで何とか成り立ってしまうだろう、世界でそれを言っていれば他国は聞くだろう、そう思っているわけですね。ところがある政治家の方と話をしていて、しみじみ思ったのは、「G7という言葉がありますよ、これは先進主要国とされている7か国が集まって協議をすれば世界を差配できる、それが出来なくなって来たからG20になった。ところが中国は、ある意味においては、一党独裁の国で、G77を作っているようなものなんだ」と、その政治家は言ったんですね。つまり冷静に考えると、あれだけ経済的に発展して豊かな人たちが急増し、しかしコロナで死者を出さない事が正義であるならば、あれだけ上手く政治的にコントロールをしてコロナの死者を出さなかった。しかも自分の地位は法律によって安定的に盤石にする、こんなのミニ独裁国家から見たら、こんなに理想的な国は無いですよ。最高の統治モデル。それが76か国いて、トップに習近平がいて、G77に国際社会はなっているんだと。実際問題として、香港に対して法律を作った時に国連で反対したのは先進国を中心に二十数か国ですよ。だけど「中国がやったことの方が正しいんじゃないか」と倍の国々が手を挙げたわけですね。もしかしたら、我々が正しいと思ってる価値観は世界で少数派になってしまう。或いは、その少数派になってしまうことの上に、ルールを変えられてしまう、こういう危機にいるんだということを、アメリカはかなり敏感に、真摯に、本気で考えているけれども、日本国内で同じ言葉を使った時には、そういう緊張感は感じられない。それが僕の日本人に対する不満なんですけどね。

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僕も本の中に「民主主義は遅いところに最大の特徴がある」と書いた。民主主義は原則的に平時の政治システムなんですよ。平時の時には議論をする、物事を決めて立法する、そして立法したことで世の中が少しずつ変わって行くわけですね。それに対して、そういう事が堪えられないと、日本の中でもそうですが、例えばデモが行われたり、或いは海外では革命が行われたり、過激に世の中を変えようとするわけですよね。または強権発動でコントロールして行く。日本は戦後、そういうものに非常にアレルギーが強いだけに、この”遅さ”が良い面もあるが、悪い面も出て来てしまっている。と同時に、今日の冒頭で「民主主義がポピュリズムになった場合、情報に翻弄されて一過性の物に、過激になる」という話をしました。そうすると逆に、日本では民主主義の悪いところが出て来ていて、政治的に重要なコロナ対策の決定が遅いと、しかしながら、一時的、情緒的な、ワッと盛り上がって消えて行く、そういうポピュリズムとしての物事の浮沈が激しくて、過激で速い。

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我が国の悪口を言うのはいささか辛いが、例えば僕たちは「平等」という概念は100%良いと教わって来たわけですよ。だけどこれ、実は恐ろしい問題をはらんでいて、「平等だから私は何にでもなれる」と、学校で教わるとするじゃないですか。だけど僕は絶対に大谷翔平にはなれないですよ。体つきが違うから。要するに生来の差によって。更に言うと、情報に大量にアクセスできるようになって、今まで知らなかったような人達の事も知ることが出来るようになった。これが民主主義社会・情報化社会の最先端の私達。そうすると「何で俺はあいつほど恵まれてないのか」と微細な差に敏感になっている。民主主義社会の最大の問題のひとつ。不平、不満が鬱屈してしまう。いま日本の国は、国家の次にはいきなり個人が来るんですよ。途中にある共同体みたいなもの、そういうものが日本からどんどん消えている、今回のコロナで明らかになって、「我々が常に不平不満を言う先は国だ」と当然、思っているわけですよ。だけど、自分が本当に困った時って、よくよく考えてみたら実はお隣さんのコミュニティで出来上がっている。一番よくわかるのは災害時。激甚災害ではお隣さん同士で助けるしかないじゃないですか。コロナでは、地方自治体の役割が大きかったわけだから、もっと都議会議員選挙とか本来は盛り上がるべきなのに、投票に行った人は42%、こういうところに日本の選挙制度が持つ限界とか、現代社会が抱えてる問題があるんじゃないかなと。

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