日本国憲法は、GHQ(連合国軍総司令部)がその占領目的を達成するために作成したものです。したがって、日本国憲法を理解するためには、GHQの占領目的を知る必要があります。「占領目的」については・・・
(1)平和と民主主義を日本に広めるためとみる立場
(2)日本の恒久的弱体化をはかるためとみる立場-があります。
いずれが正しいか、を考えるためには、つぎの2点に留意する必要があります。
2つの政策
第1に、アメリカには、伝統的に2つの対日政策があります。ウイーク・ジャパン(日本は弱いほうがよい)とストロング・ジャパン(日本は強い方がよい)がそれです。アメリカが日本をライバルとしてみるときには、前者の政策がとられます。アメリカが日本を、ロシア(ソ連)、中国など、大陸における強大な軍事国家に対する「防波堤」とみるときには、後者の政策がとられます。アメリカの対日政策は、この2つの政策の間を揺れ動いてきました。
日露戦争のときには、ストロング・ジャパンの政策がとられました。ロシアの満州、朝鮮、中国(北支)への進出、そして太平洋への進出をおそれたからです。その後、日露戦争で日本が勝利するとウイーク・ジャパンの政策がとられるようになりました。
第2に、占領中に、アメリカは、日本に対する占領政策を変更しています。朝鮮戦争を境として、それまでとられてきたウイーク・ジャパン政策を放棄してストロング・ジャパンの政策をとるようになりました。そして、再軍備を要求するようになりました。変化の要因は、冷戦の本格化、共産主義中国の強大化です。平和の敵は、日本やドイツではなく、ソ連、中国だと考えるようになったのです。
占領と憲法
占領目的については、上記(2)の見解が正しいようです。ここで確認しうることは、日本国憲法がつくられたときには、ウイーク・ジャパンの政策がとられていた、ということです。日本国憲法に、国防についての規定、そして、国柄、元首、緊急事態についての規定が欠けているのはこのような事情によるものです。
ところで、改憲反対の立場から、つぎのような主張がなされています。なるほど日本国憲法は、外国軍隊の手によって作成された「外国製憲法」だ。しかもたった10日ほどで草案が作成された「即製憲法」だ。だが内容はよい。内容がよければそれでよいではないか、と。しかし、はたして「内容がよい」といえるか否かが問題です。日本を弱体化するために国防の規定を置かなかったのだとするならば、日本国憲法は安全保障について大きな問題を抱えているということになります。
これはほんの一例にすぎません。この講座においても、このような内容上の問題点についてさまざまな指摘がなされてきました。日本国憲法の内容を正しく理解するためには、占領軍の占領目的についても考えてみる必要があるのです。