渡邉哲也『菅政権の問題点』

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一番の問題点は、菅総理官房長官を長くやっていたわけで、全部自分でお決めになる。全ての事案に対して自分で決済したがる。ところが総理と言うのは方針を決めて下に任せれば良い。任せずに自分で全部やろうとすると手に負えなくなる。で、手に負えなくなった状態が今。全部自分で口出しすると整合性が無くなって行く。
 
もう一つの問題点は、派閥が無い事。「派閥」は「政策集団」と言われるように、国会議員になると基本的にどこかの派閥に入るか、派閥の応援で委員会に入る。例えば、外交防衛だとか、財務だとか。各委員会の定員は派閥割り当て。ひとつの派閥がひとつの委員会を支配してしまうと政策にひずみが出るので各派閥に割り当て数が決まっている。派閥には横糸のようにまたがる形で国会議員がいるので、色んな分野の専門家(議員)がいる。省庁間の連携も取れる。党内で意見が割れた場合は、派閥に持ち帰り意思決定、これで調整が効かない場合は派閥の上のメンバーが会い、話し合って落としどころを決める。これが派閥の役割。この派閥を持たない総理というのはブレーンが無いということ
 
横に繋がる糸が無いから全てがバラバラになる。例えば病院を作る、病院は厚労委員会だけど、予算を付けるのは財務とか。バラけた横糸を繋いでバランスを取る。派閥が無いがゆえに非常に歪んだ構図になっている。本来であれば「安倍政権の継承」を謳ったのが菅政権。ところが、何一つ継承していない。
 

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例えば、8月下旬の時点で「敵基地攻撃能力」を得ると安倍総理が発表した。これを継承するとしたのに、してない。コロナ対策にしても(指定感染症)2類から5類にして、いろんな病院で診れるようにしようと決めて、本来は秋の臨時国会に提出される予定だった。出されなかった。だから今遅れている。ワクチン計画も、日本が一番最初に手を挙げ、支援をし、確保もした。他国は、今年の3月までに完成する予定だったのが12月8日に出来たので前倒しして接種開始。日本は同じ条件でも、結果的に前倒しはされていない。これも結局、菅政権になって止まっているから。安倍さんが作った過去の遺産を全部食い荒らしてる状態。
 
党内的にはGoTo問題もそう、国土交通省の意向を受けた。また二階さんの意向を受けたものばかりが通って行って、逆に、他の主要3派閥などが求めている正常化、例えばコロナ対策など全部が止められてしまっている。ビジネストラックについても、党の政調会までは止めろという意見。ところが最終的に菅さんがひっくり返した。自民党の決定プロセスは、例えば外交防衛委員会財務金融委員会、委員会ごとの部会があり、それをトータルに決める政調会がある。この政調会までは何でも通る。その上にある幹事長などが参加する総務会、ここで全部止められている。その典型が、習近平国賓来日反対。党の部会、政調会は反対に意見を持って行こうとした。ところが二階さんの鶴の一声で止められちゃった。これが政策決定を変な方向に進めてしまっている。
 
例えば家賃保証、6か月まで。中小に関しては2/3。中堅規模以上だと半分。これ1月15日で申請期限切れ。緊急事態宣言中に家賃保証が切れる。飲食店だけではなく、その周辺の店舗もダメージを受ける。更に雇用調整助成金、15,000円まで出るというのが2月末で終了。雇止め、所謂、解雇予告は一か月前までだから1月末で終わる。緊急事態宣言中に雇用調整助成金が止まる。これ、おかしいでしょうと。少なくとも企業の決算期の3月末まで。どうせ冬の間は感染拡大するのだから、5月の連休前まで引っ張っておけばいいでしょうという議論があった。その為に10兆円の予備費を準備したのに去年の12月時点で3兆円しか使っていない。例えば雇用調整助成金を5月まで延長していたら、企業の経営者は社員の首を切らずに済むはずだった。一方で、飲食店への補償金。東京都が百何十万円出すと言ってますが、家賃補償をして、従業員を雇止め、これは固定費補償。更に営業補償となると二重補償。営業規模も関係なしとなると無茶苦茶。
 
彼(菅総理)が成功したのは総務大臣時代で、竹中平蔵が上にいて、この時代の頭で止まっている。なのでグローバリズムだとか新自由主義者をブレーンとして雇っているわけ。竹中だとかアトキンスとか。一方では社会主義的な、自民党の一番ギトギトした汚い部分である二階さん達のグループ。この両方との、何とも言えないものを背負っているので、話に整合性が出ないのは当たり前。言ってること皆違う。で、それぞれの話を聞いて「いいね、いいね」とつまみ食いするから、こういう事になる。
 
岸田派と二階派がいろんな所でバチバチ喧嘩している。林芳正さんの選挙区や、静岡の選挙区でも。本来、国会議員がいるところによその党から引っ張って来たのを入れたり、自分の子飼いを助ける為に圧力かけたり、除名するぞと脅したり。党内で1/4くらいしかいない二階さんグループとその他が、完全に分裂・対立構造にあるので、物事が余計に進まない。議員立法したくても総務会を通らないから。超党派なら出来ると言っても、先ず党内のコンセンサスを取らないと、超党派で法案は提出できても法案は通らないということになる。
 
内閣支持率は下落しているが、政党支持率は落ちていない。ということは、他の政党には期待できないけれど、今の政権は嫌だということ。結果的に言えば。で、これ自体を変えるのは、菅さんが二階さんを切って、主要3派の傀儡として、党として、組織として動くということをすれば、ある意味、自民党は良くも悪くも腐ってますから、全部を綺麗に動かせる。ところが一部の意見だけ聞いてるから、こういう事になってしまう。また、一番の癌は林幹雄さん、今回も観光業界と会ってGoToを早い段階で継続すると。観光業は非常に重要な産業だから、ワクチンを優先的に摂取してもらおうなんて。舐めてるのか?医療関係者や高齢者ならわかるが。ビジネストラックを止めないのも、彼らは技能研修制度にどっぷりつかっていて、この利権を失いたくないから止めない。そこにカジノが出て来るし、IRも出て来る。IRも観光利権ですから。二階派の逮捕者は今のところ二人と、元農水大臣と西川さん。河合夫妻は夫が菅グループで、妻は二階派。秋元司はIRと、二階派の逮捕者続出。党内が一枚岩になれず、物事が前に進まない。
 
昨年、緊急事態宣言が遅れたことで安倍政権が批判を受けたが、当時仕切っていたのは菅さん。その後、安倍さんが直接指揮をとるようになって前にどんどん進むようになった。それまで止めてたのはある意味、菅さんと二階さんだったわけで、また同じ事をやってるのかなという気がする。
 
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